今回は「新潮文庫 紅白本合戦」のランキングTOP10(女性読者によく売れた“赤組”と、男性読者によく売れた“白組”)をまとめてご紹介します。
毎年年末から開催されている恒例フェアのようですが、本屋さんによってはフェア終了後も対象本が置かれている場合があります。気になった作品があれば、ぜひチェックしてみてください。
◆ 新潮文庫 紅白本合戦とは?
新潮文庫が毎年末に行っているフェアで、
- 赤組(女性に売れた本)
- 白組(男性に売れた本)
に分けて、それぞれの人気ランキングを発表します。今回は2024年の冬に開催された際のTOP10です。「女性向け」「男性向け」という括りはあくまで売れ行き傾向によるもの。もちろん性別にかかわらず楽しめる本ばかりです。
【赤組TOP10】
赤組10位 『墓羊たちの祝宴』 米澤穂信
暗黒ミステリーの名手・米澤穂信さんによる短編集。ある一族の邸宅で毎年起きる不可解な死、読書サークル「バベルの会」で繰り広げられる恐るべき秘密など、優雅でありながら背筋が凍る物語を詰め込んだ一冊。ラスト数行で体の芯が凍りつくような読後感が待っています。
赤組9位 『楽園のカンヴァス』 原田マハ
天才画家ルソーの「夢」に酷似した謎の絵。その真贋を見極めるために呼び出されたニューヨーク近代美術館のキュレーター・ティム。現実の芸術史と小説的な謎解きが交錯するフィクションで、アート好きからミステリ好きまで幅広い支持を得た作品。天才画家に魅せられた人々のドラマに引き込まれます。
赤組8位 『あと少し、もう少し』 瀬尾まいこ
中学駅伝に挑む寄せ集めメンバー6人の青春を描いた物語。それぞれの走者視点で物語が進むので、「襷をつなぐ」だけでなく「想いをつないでいく」尊さが胸に響きます。瀬尾まいこさんならではの温かく透明感のある筆致が魅力。心がじんわりと温かくなる青春小説です。
赤組7位 『噂』 小野不由美
「レインマン」という都市伝説が拡散し、女子高生の“噂”マーケティングがきっかけとなって起こる連続殺人事件を描いたサスペンス。都市伝説のように語られた“足首を切る”謎の犯人は本当に存在するのか。噂と現実が絡み合い、読者も警察官たちと一緒に翻弄される物語。衝撃のラスト1行が必見です。
赤組6位 『とわの庭』 小川糸
盲目の少女・とわが優しい人々に支えられ、季節の香りや食事のおいしさ、物語の楽しさなど、人生の幸せを少しずつ知っていく感動小説。悲しい境遇で始まる物語ながら、とわの人生は光りに満ちています。「生きていれば、きっといいことがある」と信じたくなる、優しく美しい世界観が味わえます。
赤組5位 『夜が明ける』 西加奈子
190cm超えの巨体を持ちながら気が小さい“アキ”と、“俺”の友情を中心に描かれる青春小説。若者の貧困やネグレクトなど重いテーマに真っ向から切り込みますが、2人の熱い友情と、苦しみながらも前に進む姿勢が胸を打つ。過酷な世界でも希望を探し続ける彼らの姿が鮮烈です。
赤組4位 『この世にたやすい仕事はない』 津村記久子
職業紹介所で紹介される仕事が、どれもユニークで不思議なものばかり。小説家を監視する仕事や、バスのニッチなアナウンス業務、おかきの袋の仕事……。ファンタジックかつリアルな仕事事情に思わず引き込まれます。仕事を通じて「自分の居場所」を見つけようとする主人公の奮闘が描かれた感動と成長の物語。
赤組3位 『ぎょらん』 町田そのこ
人が死ぬ間際に残す「赤い玉=ぎょらん」を噛むと、その人の最後の願いが分かるという不思議な伝承。葬儀会社に勤める青年が「ぎょらん」の秘密を追いながら、多くの人の生と死に出会う連作短編集。死者の想いを温かく照らし、生きることを考えさせる1冊です。
赤組2位 『小説 8050』 林真理子
いじめをきっかけに長い引きこもり状態にある息子・翔太と、その両親(高齢化した親が中年の子を支える「8050問題」)を描いた社会派小説。親子の確執だけでなく、いじめの根深さや日本社会の闇に切り込みます。後半はハラハラする展開が続き、一気読み必至の長編です。
赤組1位 『正欲』 朝井リョウ
不登校の息子を持つ父親、初めての恋に翻弄される女子高生、秘密を抱えた契約社員……社会が提唱する「多様性」という枠からもはじき出されてしまう人々が描かれる群像劇。多様性が広がるはずの現代でも、救われない人はいる。暗く重いテーマを貫きつつ、登場人物の苦悩から多くを学べる衝撃作です。
【白組TOP10】
白組10位 『ボクの音楽武者修行』 小澤征爾
世界的指揮者・小澤征爾さんの自伝的エッセイ。24歳のときに貨物船とスクーターだけで単身ヨーロッパに渡り、現地の人々とふれあいながら音楽を学んでいく姿は壮絶かつ痛快。彼の努力と情熱が、世界で活躍する日本人の先駆けとなった事実に胸が熱くなります。
白組9位 『ザ・ロイヤルファミリー』 早見和真
税理士見習いのクリスが、競馬に情熱を注ぐワンマン社長・三能の秘書になったことから始まる競馬小説。愛馬「ロイヤル」の勝利を目指す社長一家の20年にわたる波乱万丈を描く物語です。馬と人との間に生まれる絆や、有馬記念を巡るドラマは読み応え抜群。意外性のあるラストにも注目です。
白組8位 『ボッコちゃん』 星新一
「ボッコちゃん」をはじめ、日本SFの金字塔と言われる星新一さんの短編50編を収録。ロボットと人間の切ないやりとりなど、現代にも通じる先進的アイデアが盛りだくさん。星新一作品を読んだことがない人の“入門”にもぴったりの1冊です。
白組7位 『向日葵の咲かない夏』 道尾秀介
小学4年生の道男が衝撃の光景を目撃するところから始まる、ホラーともSFともミステリーとも言えない不思議な物語。小学生の物語とは思えないエログロ描写が混在するため衝撃的ですが、その“二度見”したくなる展開の連続が最大の魅力。圧倒的な読後感を味わえる、唯一無二の世界観です。
白組6位 『死の貝』 小林照幸
江戸時代以前から原因不明で“腹に水が溜まり死に至る”恐ろしい病・住血吸虫症。医師たちがこの病の解明と克服に挑んだノンフィクションです。被害が続く中、患者を救うために必死に研究を重ねた医師たちの努力は、先人の偉業として胸を打ちます。
白組5位 『暇と退屈の倫理学』 國分功一郎
哲学者・國分功一郎さんによる、意外と奥深い「暇」「退屈」の考察。スピノザやニーチェなどの思想をわかりやすく紹介しながら、現代社会における“消費”と“生き方”を問いかけます。「物があふれている今こそ、本質的な人生の意味を考えよう」というテーマが心に響く1冊。
白組4位 『世界でいちばん透きとおった物語』 杉井光
大御所ミステリー作家・宮内翔吾の死後、“世界で一番透きとおった物語”という未発表原稿を探し出せと迫られた青年・燈真。彼が遺稿探しに奔走する先で明らかになる“驚きの真実”。本を使った巧みな仕掛けがあり、“紙の本”だからこそ味わえるトリックが魅力。続編も刊行され注目を集めています。
白組3位 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 ブレイディみかこ
日本人とアイルランド人の夫婦、その息子がイギリスで暮らす中学生時代の実話ノンフィクション。人種や文化の違いにぶつかりながらも、母と子のリアルな悩みや考えがそのまま綴られています。多様性って何?という問いに対し、「うんざりするほど面倒くさいけど、無知を減らすからいいことだ」という言葉が印象的。親子で考えるヒントをくれる一冊です。
白組2位 『雷神』 道尾秀介
脅迫電話を受けたことで、新潟の村へ帰郷する主人公・幸人。15年前の交通事故と30年前のある事件が結びつき、怒涛の展開へ。多重トリックや予想外の結末に驚くこと必至の本格ミステリー。ラストの“衝撃の結末”に衝撃を受けながらも唸らされる、道尾秀介さんらしい一冊です。
白組1位 『百年の孤独』 ガルシア=マルケス
ノーベル文学賞作家によるラテンアメリカ文学の最高峰。蜃気楼の村「マコンド」で栄枯盛衰を繰り返すブエンディア一族6代の物語。魔術的リアリズムとも呼ばれる独特の世界観はやや難解ながら、その強烈な筆致に圧倒される読後感。Netflixでのドラマ化も決まり、いま再注目の作品です。
まとめ & 感想
- 幅広いジャンルがランクイン
赤組はミステリーや青春小説、社会問題を扱った作品が多く、白組は哲学やノンフィクション、世界文学の大作なども含まれ、実にバラエティ豊か。 - “多様性”と“生き方”を考えさせるラインナップ
ここ数年でより顕著になっているテーマが、「多様性」と「自分らしい生き方」。『性欲』や『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』などは、現代ならではの問題意識を深く掘り下げる内容として、話題になるのも納得です。 - 文庫フェアが終わっても、名作はいつでも読める
新潮文庫のフェアは期間限定ですが、どれも話題性の高い作品。興味を持ったものからぜひ手に取ってみてください。
最後に
今回ご紹介した10作品ずつ、どれも読書好きならずとも気になるものばかり。年末恒例のランキングなので、次回開催時は早めにチェックしてみると、さらにいろいろな作品と出会えるかもしれません。
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